(読書日記)「南欧の怪談」

南欧怪談三題
(ジュゼッペ・トマージ・ディ ランペドゥーザ他/岡崎市図書館蔵書)

「鮫女(セイレン)」(ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーザ)「亡霊のお彌撒」(アナトール・フランス)「ヰギエの女神(ヴェヌス)」(プロスペル・メリメ)のの三編を収録。
書名には「怪談」となっているが、いわゆる「怖い話」ではなく、ちょっと不思議な話。
この辺は訳者によるためかもしれない。

「鮫女」
軽快な読み口で知識人である老人と若者の友情が描かれており、老人の口から語られる過去として「鮫女」、つまりセイレンと若き日の老人との出会いが語られる。
この話中の鮫女は妖精や妖怪と言うよりも自然現象そのもの、あるいは神に近いのかもしれない。

「亡霊のお彌撒」
教会堂の堂守が語る、彼がかつてその父親から聞かされた話。
身なりのよく皆に好かれる老婆。悲恋。信仰。そして再会。
非常にオーソドックスなお話。

「ヰギヱの女神」
考古学者である主人公が、古代・中世の遺跡を調べるため立ち寄った、ある村のアマチュア考古学者ド・ペイルホラード氏の館で遭遇した怪異。
女神の像、政略結婚の花嫁、だめ婿、初夜。消えた指輪の行方。異教の女神。


訳者のこだわりであろうか。ルビが多くやや古めかしい言葉で書かれていて好みが分かれそう。
耽美的っちゃ耽美的。
気分転換は良い。
ホラー好きとしても怪談好きとしても耽美好きとしてもちょっと微妙。図書館にあれば呼んでも良いかも。