(読書記録)「ハーモニー」

ハーモニー」(伊藤 計劃/ハヤカワ文庫JA)

前作の、「虐殺器官」(感想)後の世界、大災禍の後で、高度に医療技術が発達し、医療コミュニティを単位での統治がなされている世界を舞台にしたSF小説

現在の政府機構に代わり、台頭している統治機構「生府」。政府よりもより小規模でコミュニティに密着した生府のもとに、健康と人間関係の親密さを至上の価値とする社会。
タバコ、酒といったさまざまが有害嗜好品として排除され、己の社会的評価が常に公開される社会。
これらを、法の下にではなく、個人の良識のものとにかち得た世界。

コミュニティの住民は相手を思いやり、ハーモニーを奏でる。
生命は最大の資源。最大のリソース。そして生命第一主義という宗教がかった強迫観念と閉塞感。

現在の先にある新世界を描いているし、描かれる人物たちは、現在の先にいる新人類であろう。
今とは異なる社会で、今とは異なる価値観が当然のものである世界。

そこに現代の少女達とも共通の多感さが混じる。

残念ながら、取り方によっては非常に中二病的かなぁ。

昔読んだ星新一ショートショートに目を使わずにもの見るテレパシーを獲得して、目という器官を失った子供の話を読んだことがあるけど、そんな感じ。
意識のない世界に対する「恍惚」という表現は面白いなぁ。

ちなみに、「虐殺器官」は、読後4カ月経た今、再読したくなる、印象的な言葉がある小説でした。
あちらももう一度読もうかなー。