【読書009】「シュメル神話の世界―粘土板に刻まれた最古のロマン」

シュメル神話の世界―粘土板に刻まれた最古のロマン」(岡田明子、小林登志子/中公新書)

先日紹介した「シュメル―人類最古の文明」よりもだいぶ親切。
タイトル的には本書が各論、「シュメル―人類最古の文明」は総論ぽい感じがしたので、「シュメル―人類最古の文明」から読んだんですが、逆にすればよかった。
序章として総論が語られており、「シュメル―人類最古の文明」での主に用語的な意味での疑問点が解決しました。
「シュメル―人類最古の文明」からの転機と思われる部分もある。

>シュメル語は膠着語を主体とする言語(独立する単語に「てにをは」のような文法的意味を示す語が付着して成り立つ。日本語、韓国語、トルコ語など)であることは確認されている。

日本語とトルコ語って文法的には似ている(文章の構成順番が同じ)みたいな話をどこかで読んだなーと思って調べたら現在のトルコ語膠着語らしい。
シュメル語が現在のトルコ語までつながっているということは流石に無いにしても、時を経て同じ場所で同じような文法の言語が用いられているというのはなかなか面白い。

環境状況(日照時間や気温等)とその場所に生きる人々の性格、民族性は関連があると思うんだけど、民族性が変われば言語特性も変わってきそうではある。

>「シュメル神話」は、メソポタミアに興亡したアッシリア帝国バビロニア帝国などをはじめ、はるか遠くアナトリア高原(現在のトルコ中央部)のヒッタイト帝国やシリア・パレスティナの諸国にまで伝播し、今日の西欧の精神世界を支えている聖書にさえ、シュメール神話との関連が指摘される部分が多々見られる。(9ページ/序章「粘土板に書かれた物語」)
この辺は文字をもったことのすごさだよなぁ。
伝播性、保持性、時間・空間的な広域影響…等々。
インカ帝国滅亡の一因に、文字を持たなかったゆえの、伝播性の悪さ/不正確性などがあげられるのも理解できる。

楔形文字の記された粘土板から読み解く神話内容。
同じことを描いたと思われる粘土板が複数の遺跡から出土し、複数枚現存する場合もあり、時代や都市の違いによる人気のある神々の違いなど面白い。

資料として記載されている絵とか、刺しゅうしたら面白そうだなーとかちょっと思った。
粘土板の複写だけあって簡素で線画的で、少しヒエログリフを思い出させるデザイン。

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