【読書039】「巨大翼竜は飛べたのか」

巨大翼竜は飛べたのか」(佐藤克文/平凡社新書)

ペンギン、アザラシにウミガメ少々だった「ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待」に対して今作で主となるのはウミガメ、マンボウ、そして様々な鳥たちだ。
「ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ」が筆者自身の経験から描かれているのに対して、本作で実際に手を動かしたのは筆者と、筆者のもとで研究生活を行った幾人もの学生である、との立場で書かれている。

印象的だった点をいくつか。

●従来は貝や甲殻類などの底生動物を食べると考えられてきたアカウミガメだが、くらげも結構食べる
●プラスチックの誤食は実際あるが、気の破片や鳥の羽なども誤食しており、少量であれば排出されるようだ
ゴミか食べ物かは一応見分けるらしく、一瞬迷うそぶりがあるらしい。
プラゴミを目前に食べ物か迷うウミガメ。なかなかシュールな情景が日夜海中で繰り広げられているようだ。

●最適遊泳速度(距離あたりのエネルギー消費がもっとも少ない速度)=休止代謝速度1/3×抵抗計数-1/3
●休止代謝は哺乳類よりも爬虫類、魚類で低い
抵抗計数は紡錘型の方が小さくなるとしても、休止代謝には変温、恒温や冷熱とかの方が効きそうな気がする。実際はどうなんだろうか?

マンボウは割とはやい速度で移動している
この話を家族にしたら、「マンボウプランクトン(浮遊生物)らしい」との情報をくれた。
泳ぐ力が非常に弱く、海流に乗って移動するしかない、との説があったようだ(なお、この説は近年は否定されている模様)。
手で触ると手の跡がそのままついてしまうほど皮膚が弱く、飼育が難しいのは有名だけど、巷で流れている【マンボウの死因】【外部まとめ】という文章はどこまで本当なんだろうか?
最弱と名高いスペランカーの主人公のようなマンボウ
流石に産卵数は3億と膨大な数だ。

●クジラを探しに富士登山
高い山ほど電波がよく届くとはいえ。学生の熱意…?
いや、むしろ、こうゆう人じゃないと研究者って勤まらないよなーという感じがする。
私の研究室のボスは30代にして某旧帝大の教授になったような才気あふれる人だったが、「宝くじが当たったら自分のラボで、誰にも文句言われず好きな研究をしたい」と言うような変態だった。(それを聞いた瞬間、私には研究者の道は無理だと悟ったよ。)
クジラを探して富士登山をしたり、ペンギンが好きだという理由だけで南極を志す学生に、私はなんとなくあの時のボスと同じものを感じる。
根拠や理由などどうでもよくて、ただそれほどの熱意がなければ、務まらないのが研究者の世界なんだと思う。

面白い一冊なんだけど、タイトル詐欺は相変わらずだ。

翼竜の話しは、ざっくりいうと、
翼竜の体重の推定が軽すぎるんじゃないか?
という一点だと思う。
色も形も、残っている化石(しかも殆どの場合、全体のごく一部)から想像で補う世界なので実際に相当誤差があるとは思う。

本作は少し計算式が多かった。
本作に比べて、「ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ」の方が計算式が少なく読みやすいと思う。なので、星を半分減らして3.5をつけたいのだが、そんな評点はないので3とさせていただいた。