【読書047】「日本のムスリム社会」

日本のムスリム社会」(桜井啓子/ちくま新書)

頑張って書いた感想が消え失せてやる気も消え失せそうだが、もう一回だけ頑張る。

日本各地にあるイスラムモスク。
民家や廃ビル、工場、果てはパチンコ店を改造してできたそこには、ドームも尖塔もないけれど、日本にいるイスラム教徒たちが集い、礼拝を行っている。
本書はタイトルの通り、日本に暮らすムスリムイスラム教徒を題材にした新書だ。

イスラム人口を明確に知るための資料がないことから、イスラム国から日本への渡航者を日本国内でのイスラム人口の目安として想定している。
日本への渡航者が多いイスラム国の上位はパキスタンバングラデシュ、イラン、インドネシアの4国。

このうちのパキスタンバングラデシュインドネシアの三国は、そもそも外貨獲得のため海外出稼ぎを国をあげて奨励していた国だ。
植民地時代の宗主国への出稼ぎにはじまり、原油バブルに湧いた中東、そして好景気、円高なバブル期の日本へやってきた。

この三国に対して、イラクは少し傾向が異なっている。
イラン・イラク戦争により生産設備が打撃をうけ、高学歴でも職がない、悪化する欧米諸国との関係という中で、渡航可能な唯一の先進国が日本だった。

言葉のわからぬ異国で働くに当たりどの国の出であっても、単純労働、工場労働が主となる。
自国に帰国後、日本で単純労働に従事したことを明言したくない方々もいるという。
なるほど、と思う。

日本生まれの二世を日本の学校に通わせながら、どのようにしてムスリムとして育ていくかという教育問題と、イスラームの教義にのっとった土葬が可能な墓地をどのようにして確保するかという二つの問題が、彼ら共通の関心となっている。(22ページ)
国土の狭さ、伝染病への恐れなどもあり、日本国内での土葬はなかなか難しいだろう。
教育問題も、他教徒を受け入れることはできても、宗教アレルギーな日本人だから、教育の場に宗教を持ち込むことには難色を示しそうだ。
日本というまったくの異国にあっても、ムスリムであり続ける彼ら。非常に興味深い。

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ところで、日本人なら誰でも一度は口にしたことの有りそうな「神様、仏様、キリスト様」って神頼みの言葉。
他教徒、特に一神教の方々には、ものすごく衝撃的な言葉なんじゃないかと思った。

神様は日本神道でいう八百万だし、仏様は仏教、キリスト様はキリスト教
各宗教の所謂『神様』をすべて一緒くたにして、「誰でもいいから助けてくれ!」ってすごく乱暴…。

そんな日本人にとって、「アッラーの他に神はなし」を信仰告白するイスラム教徒を受け入れることは容易だろうど、受け入れられた方はやや微妙な気持ちになりそうだ。
イスラム教徒にとってアッラーは「他に神はなし」な存在なのに、受け入れる日本人側は八百万いる神のひとりとして受け入れるんだから、凄い温度差だよ。

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本書の中でインドネシア人に人気と紹介されていた「チキン風味の袋入りラーメン」。どんなものなんだろうかと検索してみたけど、うまくヒットせず。


英語でも日本語でもない言語が書いてあるだけで、だいぶ異国情緒。


こっちはなかなかおいしそう。

よく確認しなかったけど、トルコのスーパーで買ったクノールのスープはハラル対応だったんだろうか。
結構おいしかった。

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