【読書078】「てるてるあした」

てるてるあした」(加納朋子/幻冬舎文庫)

中高生向け現代ファンタジー

高校受験が終わり、中学校を卒業して高校入学間際の春休み。
両親の夜逃げにより、高校へは進学できなくなり、遠い親戚だという「鈴木さん」を頼って、佐々良にやってきた照代。

居候先の鈴木久代、佐々良の住人達、人とのかかわりの中で成長していく物語。

「放課後、何時間も大木さんの勉強を見ているあいだ、久代さんのお子さんはどうしていたんでしょうね?」(181ページ)
「いい人と、いい先生とは別ですよね。いい人と、いいお母さんも、やっぱり別かもしれない」(182ページ)
優しい人たちが醸し出す雰囲気は柔らかく甘いけれど、優しさの裏側にある、脛の傷。
かつて、ひょっとしたら今も、犠牲となった誰かたち。

気のもちようで幸福にも不幸にもなれるのは間違いないけれど、原因があって結果があるのに、原因を許すことだけが美徳なのは、それはそれでおかしいと思うんだよね。

照代は母を許すけれど、だれが照代を許すんだろうか。
己が切り捨てた物を美談のように描かれているのを見ると、少しだけ重苦しい気持ちになる。

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