【読書105】そこに日本人がいた!―海を渡ったご先祖様たち

そこに日本人がいた!―海を渡ったご先祖様たち」(熊田忠雄/)

公的使節団として、芸術への夢を胸に、一攫千金を夢見て、あるいは今の貧困から抜け出すために。
交通網が発展した現代でも遠い数々の異国。敷居の高い海外生活。
様々な事情を抱えて海を越え、そこに根付いた日本人達がいた。
彼らの記録した当時の各国と、彼らを見た人々が記録した、当時の日本人達を集めた22話。

印象に残った方々を少しだけご紹介。

◻︎ニューカレドニア 森村桂
父に聞いた天国に一番近い島を探して辿り着い南国の島。だがその島には彼女よりも先に渡った人夫たちがいた。
はるか彼方のリゾートと日本人の意外な関係。

◻︎イタリア ラグーザ玉
芸術への夢を胸に、お雇い外国人だったヴィンツェンチオ・ラグーザの帰国に同行し、渡航
当時一緒に渡航した姉夫婦の帰国後もイタリアに留まり、画家として花開いた女性だ。
本人も同行した姉夫婦ももちろんすごいが、快く送り出した両親が凄い。
気にするのが食べ物のこと、というのが非常に日本人的で、それに対する彼女の「ないなら作るのよ」的な返答がまたなんとも言えず日本人で、クスリときた。

◻︎マダガスカル 赤崎伝三朗
日本での借金生活から抜け出すために、マダガスカルでフレンチカフェを始め、やがてはホテル経営するまでになった実業家。
カフェ時代には偶然に寄港したロシアのバルザック艦隊のスパイ活動に精を出してみたりした方。

◻︎ ロンドン 岩吉久吉音吉
尾張の水夫である三人は漂流民であり、三浦綾子の小説「海嶺」の主人公達でもある。
(書評:(読書記録)「海嶺」)
鎖国体制真っ只中の時代にあってイギリスロンドンを観光した日本人として、漂流民ながら本書では例外的紹介されている。
彼らの帰還が有名なモリソン号事件であり、蛮社の獄へつながっていく。

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