【読書125】スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実

スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実」(ルーク・ハーディング/日経BP社)

「事実は小説よりも奇なり」
ドキュメントを目にすると暫し思うことであるが、本書もまた、小説よりも奇なる実際の事件の経緯を追ったノンフィクションであった。

事件が起きたのは2013年6月。エドワード・スノーデンNSA(アメリカ国家安全保障局)における通信傍受、個人情報収集の規模や現状を告発した。NSAに協力した企業としてMicrosoftやアップルなど錚々たるIT企業が名を連ね、通信傍受の対象としてはフランス、ドイツをはじめ多数の同盟国が含まれていた。
フランス大統領が遺憾の意を表明していたことはまだ記憶に新しい。

本書ではいわゆるスノーデン事件の主人公であるエドワード・スノーデンの生い立ちから、いかにして特大のスクープをガーディアン紙が公開するに至ったか、各国での反響などがまとめられている。

世界的に類を見ない超ビッグスクープ公開までの各国での反応に文化的背景が見え隠れしており興味深い。
スパイ天国イギリス、歴史的背景からスパイ行為に対して激しい拒否感を抱くドイツ。冷戦構造を引きずるロシアに反米各国の思惑。
そもそも、告発に至るスノーデンの心理が、とてもアメリカ人的な発想なのではないかと感じた。

大規模な情報漏洩事件であるが、情報漏洩よりも、アメリカによるスパイ行為が問題視されることとなり、そう言った意味ではスノーデンが望んだ結末に近いのだろうか。

「表現のすべてが記録される世界になど住みたくありません」と、告発に至った彼が、ロシアに亡命し保護されている現実がなんとも皮肉である。


(本書は「レビュープラス」様よりご提供頂きました。)

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