【読書128】動物による農作物被害の総合対策

動物による農作物被害の総合対策: 最新の動物行動学に基づいた」(誠文堂新光社/ひたちなか市立図書館蔵書)


以前のアパートで鳩の巣に悩まされたことがあるので、獣害を受けている立場から言えば、本当に迷惑でストレスなのは重々承知なのだが、うっかり楽しく読んでしまった。
例えばハクビシン
30cm程度なら走って乗り越えるが40cm程度になると手をかけてよじ登る。また腰をひねることで侵入する。垂直な壁も登るし、ぶどうの皮は器用に吐き出す。
やばい。可愛い…!

野生鳥獣による農作物の被害額は、実に年間200億円にのぼるという。
被害対策として行われるのは、多くの場合「捕獲」である。
実際、対策の甲斐あってニホンザルの捕獲数は10年前の1.6倍。イノシシに至っては10年前の4.5倍に増加しているにもかかわらず、被害総額は10年前とほぼ横ばい。これはなぜか。

鳥獣害防除の本であるのだが、表紙に「最新の動物行動学に基づいた」とあるように、習性や侵入経路にはじまり一般的に行われる防除(超音波や強い光)への反応、効果的な防除方法が記載されている。

【原因関係】
⚫︎野生動物の増加は、栄養状態改善による出産数の増加ではなく、死亡数の低下が主因である可能性が高い(野生動物の個体数は餌の少ない時期に影響を受ける)。
⚫︎高速道路沿いなどで崩落・侵食防止用に寒冷地型牧草を植えることが多いが、これが冬場の餌場となり、また道路伝いに人里への侵入を誘導している恐れがある。
⚫︎野生鳥獣は環境の変化に対しては警戒心を持つが、効果的な防除を行わないと、逆に安全である、その先に餌がある、と学習してしまいさらなる被害につながる。

【対策関係】
⚫︎農業残渣やゴミの管理を行い、冬場の集落を「野生鳥獣にとって魅力的な餌場」にしないことが大切。
⚫︎中途半端な対策は、効果がないばかりか、野生鳥獣を慣れさせ侵入ルートを作ってしまう場合がある。例えば電気柵は四方、24時間365日の管理・通電が効果的。
⚫︎多くの動物で視覚遮断は有効。餌が見えると執着して柵の中に入ろうとすることが多い。
⚫︎柵は高さよりも地面側、隙間を作らないことが大切。

【その他】
⚫︎加害動物によって対策が異なるため、効果的な防除には加害動物の特定が大切

イノシシに始まり、ニホンザル、クマ、シカ、ハクビシンヌートリアなど、10種の動物と鳥類対策について書かれている。
鳥獣害、農業に無関係な人間が読んでも案外面白い。

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