【読書175】ショッピングの女王

ショッピングの女王」(中村うさぎ/文芸春秋)

消費は快楽だ。それは間違いない。
動機はどうであれ、経済状態がどうであれ、価格がどうであれ、消費は快楽なのだ。

モノを買うという消費行動自体が、私にとって快楽なのである。そして残るのは、ガラクタの山と借金だけ。それでも、買い物は止まらない。断崖に向かって走るレミングの群のように、私の買い物は破滅に向かって突っ走るのだ。俺たちに明日はないって心境だな。少なくとも私の預金通帳には、常に未来がない。
それでも止まらない浪費。他人は彼女を買い物依存症と言う。
美顔、痩身、そしてブランド!
後にはホスト遊び、整形へと歩みを進める女王様の、浪費、依存は買い物からはじまったのだ。

「私がブランド品を愛用するのは、それがブランド品だからではなく、何十年も使えるしっかりした商品だから」とか気取って言う人がいるけど、それは違うね。私たちがブランド品を購入するのは、それがブランド品だからだよ。ブスでもバカでも育ちが悪くても、とりあえずブランド品持ってりゃ、エラくなった気分が味わえるからだよね 。
清々しいほど真理だよなぁと思う。
何十年も使うかといえば、たぶん使わないし、多くの場合、安物を使い潰して買い換えていくほうが低コストだ。

ねぇ、「瘦せてなきゃいけない」とか「顔は小さくなきゃいけない」とかさぁ、美人の条件が増えれば増えるほど、こっちはコンプレックスの数も増えてって、ますます金を遣うハメに陥るワケだよなぁ。
本書が書かれて10年以上が経った今も、コンプレックス産業は栄華を極め留まるところを知らない。
そんなワケで、今日も女王様は、ドイツの魔法のシャンプーで身体を洗っている。ま、こーゆーのは宗教だからさ。信じる者は救われるのだ。
いっそ宗教と割り切ってしまえば、実際にコンプレックスは改善されなくても、気にならなくなるのかもしれない。

自分の快楽につながらない出費は、私にとってすべて「悪」なのだ。
そうとはいえ、住民税や健康保険料の滞納など、まったく笑えないが、するどい切り口、ある意味潔い態度、なによりそれだけ浪費しても自転車操業でも破産せずにすんでいる事実…。

キティちゃんの顔でウンコを拭いてみたい
その発想はなかったわーと思わず唸ってしまう発想力。
シンプルに、凄いな、中村うさぎ