【読書177】彼女のこんだて帖

彼女のこんだて帖」(角田光代/講談社)


食べることは生きること。
本書は誰かの日常のなかにある食事がモチーフの連作短編集である。

ある話の脇役が主人公となって次の物語へと繋がっていく様子は、まるで、日常の家庭料理のようだな、と思った。
なんだか、昨日の副菜に使われていた食材が、今日のメインとなっている感じ。

恋の日のラムステーキ、主婦ストライキのミートボールシチュー、拒食症になりかけの妹に送るピザ、受験生のうどん…。

不思議なことに、食べないという行為は、本来隠しておくべき欲望が、剥き出しになっているような印象を与えた。(76ページ)
だとしたら、本書の主人公たちは、食べるという行為で、様々な欲望、本音をひた隠しにしているのかもしれない。
それぞれのこんだてが、料理をするという行為が、具体的だった不満や不安を飲み込んで、浄化していく。

たぶん、料理はセラピーなのだ。
こんだてを考えて、レシピを考えて、実際に手を動かして、そして食べる。
頭も体も使って、最後には美味しいという快楽をもって完結する。

さてさて、他のご家庭の家庭料理を覗いているような気分になる、本書。
特に、ちまきがとても美味しそう。
巻末にはレシピが掲載されているので、近々チャレンジしてみようかな?