【読書178】オーケンののほほんと熱い国へ行く

オーケンののほほんと熱い国へ行く」(大槻ケンヂ/新潮文庫)

インドへの取材旅行記、そしてタイへのバックパッカー体験旅行記の2編からなる旅エッセイ。
旅エッセイとしては、可もなく不可もなくな感じなのだが、熱い国ならではの徒労感が伝わってくるのは、さすがだ。

まずはインド。カレー、ターバン、タージマハールのインドである。「インドで俺は変わった」のインドだ。

とにかくコジキが多く、怪しいドラッグ売人に声をかけられ、列車は時間通りになんかこないし道路は大渋滞。おまけに機材は紛失だ。
どの出来事も、これぞインドといわんばかりの、なんだかオーソドックスな内容に思える。

続いてタイ。バックパッカーごっこをしに、英語もタイ語もわからないままタイへ降り立つ。
タイでのバカンスムード漂う楽園コ・サメットの様子は、バックパッカーらしい金欠や不衛生さ、無茶苦茶さとじゃ無縁で、何しに行ったのよ、と。別にバックパッカーじゃなくてもいいじゃないか、と。ちょっと思わなくもない。
アレな日本人バックパッカー観察記録としても、まぁよくある感じだ。

そういえば、かつてインドを中心に、バックパッカーとして旅をしたという同僚にインドという国の印象を訪ねた。
「疲れる」の一言だった。
なんだか本書からは、そんな疲れが伝わってくるのだ。
暑いを通り越して熱い気候。しつこいコジキ。
文化、というには生易しい、別世界に生きるインド人。
文章を読んでいるだけで、なんだかぐったりしてしまう暑苦しさだ。

言語のわからない異国だったタイ。そんな中にぽつんと一人。
それは考えただけで怖すぎるが、取材旅行で団体だったインドよりも個人で右往左往するタイの方が、なんだか安心できる気がする。そう思わせるだけのなにかがインドにはある。