(読書記録)「雨の塔」

雨の塔」(宮木あや子/集英社文庫)

ブーム中なので連続で宮木さん作品だけど、本作は秀逸。

情報と自由以外は何でも手に入る、隔離された岬の大学。
資産家の娘だけが集う特別な女子大を舞台に、それぞれの事情を抱えながら、塔の様な寮に集う4人の少女たちを描く。

資産家の妾腹の娘でお嬢様の三島、三島の親友で人形のような都岡。少年の様な矢崎と象牙の肌の小津。
脛に傷を抱える者同士が傷を舐めあい、己の中の空白を埋めあい、やがて崩れていくバランス。
明らかに、または人知れず壊れていく少女達。

しっとりとした読感、どこかぞくっとするミステリのような語り口、非常に耽美的で登場人物たちにもリアリティがなくて、良い。

部屋の中、壁一面に貼巡らされた青い青い空の写真。

今まで読んだ宮木作品の中では「花宵道中」が一番近い。

余談だけどこの文庫本は表紙も好き。
きれいなブルーに子供じみた宝石箱、白いレース。本作のイメージにも大変合致している。