【読書074】「面白南極料理人」
ある意味、究極の旅本であり食事本。
日本の南極観測基地中でも標高3810mに位置する、ドームふじ。
有名な昭和基地からは1000?離れており、南極で最も低温な領域のひとつ。
本書はそんなドームふじ第38次越冬隊(1996-1998年)に選ばれた、調理担当、海上保安官、西村淳さんの南極お食事エッセイだ。
基地に運搬する準備から始まり、基地への移動。オープンなトイレに高級な電話。
いざ基地に居つけば、誕生会!パーティー!慰める会!ととにかく飲んで食べて飲みまくる。
平均気温はマイナス57℃。
ペンギンもアザラシも、それどころか菌はおろかウィルスすらいない極寒の地で、なぜか恒例行事は、屋外ジンギスカン。
肉はタレにディップする動作の間に凍りつくし、ビールは1分以内に飲み切らないとシャーベット。当然気も抜けてしまう。
なんでそうまでして屋外でやるんだ、ジンギスカン。
なんか楽しそうだぞ、ジンギスカン。
極寒の中でのソフトボール大会やらラグビー大会、果ては生き埋め実験と、基地内のおやじたちは悪乗りしまくりで、読んでいて非常に楽しい。
以前読んだ「ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ」、「巨大翼竜は飛べたのか」に描かれていた南極研究の裏側にはこういったサポートメンバーの存在があるのだ。裏話を聞いた気分だ。
非常に高価な食材が大量に用意されているように見えるけど、食事くらいしか道楽のない現地で、隊員たちのストレスを和らげるための精一杯がつまっているのだろうなぁ。