【読書134】サボり上手な動物たち――海の中から新発見!

サボり上手な動物たち――海の中から新発見!」(佐藤克文・森阪匡通/岩波科学ライブラリー/ひたちなか市立図書館蔵書)

対象を記録するという手法の発明は、従来の手法、観察では「行動」に着目しがちであるが、記録することによって「行動しない」場面の存在が明るみにでたのである。
本書では動物たちの「行動していない」時間に焦点をあてて、様々な研究結果を紹介している。この着眼点、発想の転換のような感じで面白い。

⚫︎イルカ類は他の個体の出すクリックス音を盗み聞いているようである。
⚫︎シャチは最強の捕食者であり、シャチがいると他の鯨類が見られなくなることがある。
⚫︎シャチは優れた耳とエコロケーション能力を持つため、音を出すことで存在と位置がシャチにばれてしまうリスクがある。
⚫︎このため一部の小型イルカ類ではシャチに聞こえる100kHzより低い音は用いず、シャチには聞き取れない100kHz以上の高い周波数のみを用いている例もある。
⚫︎シャチ自身も、捕食対象に気づかれる恐れがあるため、特に捕食行動前はコミュニケーション音もクリックス音も必要最低限の使用にとどめている。

⚫︎テッポウエビをはじめとした甲殻類の多い天草の海は、小笠原などに比べてうるさい。

サボる、というタイトルだけど常に全力ではなく、時には力を抜いてエネルギーを温存、効率的に生きている、というお話。
個人的にはイルカ類の項目が一番面白くて、印象に残ったのもそこばかりになってしまった。