【読書169】バナナの世界史 歴史を変えた果物の数奇な運命

バナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命」 (ダン・コッペル/太田出版/ひたちなか市立図書館書蔵)

小麦、米、とうもろこしに次いで世界第4位の生産量を誇る農産物、実はそれがバナナであるという。
世界で最も多くの人口を上から救っている植物であり、バナナのプランテーション、流通のもつ莫大な権力を風刺するバナナリパブリックバナナ共和国という言葉も存在する。

バナナを襲う病があり、すでに壊滅的なダメージを受けた系統がある。
現在流通している系統もまた、同じ病の脅威にさらされており、バナナは消え行く植物と言えるのかもしれない。

正直に言って、そこまで身近な食品、というイメージはない。
確かに安価ではあるけれど、みかんやリンゴの方が身近という意味ではずっと身近だ。
先日、「データで探る2015年」と題して、NHKで国が行っている家計調査をデータ分析する、という番組を放映していた。それによると、実はGDPと逆の相関がある食品がバナナであるらしい。
ちなみにGDPと正の相関があるのは牛乳とかまぼこだとか。

そもそもバナナとはどんな植物なのだろうか。

ほぼ完全な不稔性の植物をもとにして、育種の問題を解決できるほど充分な数の子孫を作り、さらには望ましい性質を組み入れ、また新たに不稔の植物を作りだすことは、品種改良においてほとんど例がない難題である。(118ページ)

種子がないことからもわかる通り、不稔性の実がバナナである。
種子がないため、栄養生殖で増やす。クローン生殖であるため、遺伝的な多様性はない。
これが病害虫に対する脆弱性の主因であり、かつてはバナナのメイン品種であったグロスミッチェル種が衰退した原因でもある。

タイトルに「世界史」とある通り、基本的にはバナナ共和国やバナナ会社を取り巻く陰謀や事件を紹介している。

かなり真面目な本であるのだけど、印象に残っているのは、アダムとエバがたべたという知恵の実が「バナナ」であったのではないか、という説。
卑猥すぎる形状から皮をむいてアルミに包んで売られていたという二点。
なんだか、色々なことが、だいぶ印象が変わって聞こえてしまう。